主力の5993知多鋼業の株価は買値から2.67倍に

日本株投資

保有期間5年9ヶ月に及ぶ、私のポートフォリオの45%(買値ベース)を占める主力、愛知の自動車部品(ばね)メーカーの知多鋼業が、主要取引先であり株式持ち合いの関係にあるカヤバによるTOBにあい、発表から株価は3日間で倍以上に。

このインパクトは昨日1日で私のポートフォリオ全体を35%押し上げるに至ります。1日で投資開始来約6年分の全体資産の上昇額を軽く上回る上昇をみた計算になります。同時にこれで、全体資産の上昇率も投資元本が約倍増となり、同期間内での日経平均(+約80%)やTOPIX(+約70%)の上昇率を上回ることとなりました。

今の私ではこんな馬鹿げた投資割合のポートフォリオは組めません。買った当時、投資始めて数ヶ月だったからこそ踏み切れたことでもあります。しかし個別の企業、ファンダメンタルズ分析の長期視点という意味で間違ってはいませんでした。以下、買いの理由や実体験に基づく資産バリュー、過疎株に投資する際の注意点、私が気をつけている投資に関することなどを書きます。

2018年末頃にピーター・リンチの「株で勝つ」を何度も読み込んで、かぶ1000さんやwww9945さんの取材記事やブログなども読み、参考にしたうえで銘柄を選び、フルポジションに。→10日後にクリスマスショックでいきなりその年-10%。次年度早々に株価は概ね戻しはしましたが、握力が続かず売ったり買ったり。長期投資に足る銘柄を自分の目であらためて探そうとなり、一旦ポジションをほぼなくします。前職がバイク仕事だったこともあり「バイク タイヤ メーカー」で検索。出て来た中からニッチトップの大同工業と、二輪車向けばねシェアナンバー1の知多鋼業に絞りました。そして、知多鋼業は売り上げは伸びているにも拘わらず、株価は低落傾向、そして驚異のキャッシュリッチであり時価総額以上の正味現金性流動資産を持っている、かぶ1000さんの言う「安全域のある、資産バリュー銘柄」にあたるという、つまり「1500円入っている財布が1000円で買える」(数字は例えで、実際はもっと安い)状態であることがわかり、「成長株かつ資産株」に分類される優良銘柄と思い、まとまった資金を投資しようと決めました。そこから9,000株まで1年以上かけて買い集めるに至ります。

買い始めた時すでに本決算発表直前で、ある程度買い集めた直後の本決算で最高益、株価は跳ね上がり、いきなり「決算またぎ」に勝利しました。その時いったん売ることも正解ではありました。何せその後、トランプ政権で米中摩擦が深刻化、自動車業界は低迷、株価も低迷と、下がり続けたからです。そして、コロナショックもやってきます。

業績、株価とも低迷を極めます。その後やっと物流も正常化し、自動車業界はV字回復も見せ、業績、株価にも光が。しかし今度は物価高、人件費高が押し寄せ、業績を圧迫。かと思えば東証のPBR1倍割れ対策要請でこうした割安資産バリュー株の株価だけは一時ぐんと伸びたり。その反動で今年は下げ続けたり。そして、今回のTOBにいたり、知多鋼業は保有5年9ヶ月で結局株価は2.67倍になり、同期間内の日経平均+約80%の約3倍の上昇率となりました。それまでは比べようもないくらい負け続けていました。

この間心掛けたのは「株価ではなく会社の中身を見て、買った理由が揺るがなければ持ち続ける」ことだけ。ピーター・リンチの「株で勝つ」に書いてあったことです。時価総額以上の何らかの資産を持つ「資産株」に関しては、その割安さに目をつけたTOBにあうまで売らない、とも書いてあります。全く正しかった。容易ではありませんが。

しかしこの本にも、こういう地方証券取引所単独上場の株に投資する際特有の注意点というものがあることは書いてありません当然。

例えば、出来高が極端に少ない、1日100株(1回)や、0の時もある。つまり、買えない、売れない。9,000株買うのだけで骨が折れる。あまりに約定しないからさっさと高値で300株500株と毎日買っていたらそれだけで株価が上がってしまう。証券会社から注意される。また、相場暴落時は実は安全域といいながら普通の株より極端に下落する。なぜなら出来高が少ない過疎株ゆえ投げ売りが1,000株2,000株程度でも買い手がいなすぎて多いとなり、暴落時は数千~1万株の売りがストップ安を引き起こすこともある。バリュー株の意味ないやん!元々安いから下がりにくいんじゃないのか!となる。そのくせ相場上昇時は捨て置かれ、放置され、ついていかない。長年割安で放置され続ける。「バリュートラップ」と言って、資金拘束が長い。3年なんて甘い、と、バリュー株投資家のたーちゃんさんも仰っている。また、出来高が少ないということは損切り手仕舞いして逃げるのも困難。1,000株売り抜けるだけでも株価が下落する。乗り換えたくても容易ではない。こういうのは「名証ディスカウント」と言って、名古屋証券取引所など地方証券取引所にありがちな問題で、更に投資家を遠ざけ株価を安くさせる要因。また、東証よりも上場基準が緩く、株式持ち合いや株主軽視の施策なども未だにはびこる。安い銘柄がゴロゴロある市場でも、なかなか手を出したくならない。

私がそんな名証単独上場銘柄を主力に出来たのは無知ゆえ。投資開始3ヶ月くらいのペーペーだったからこそ。今なら出来ない。しかし、長期上がらないことはその当時でも覚悟が出来ていた。かぶ1000さんも長期スタンスだし、見習おうと。この銘柄に関しては配当こそ出るものの、いつ上がるかわからない「金(ゴールド)」として保有しておこう、と。で、それだけではつまらないので、自分なりに調べて今は13銘柄まで投資しています。

大前提として、これも「株で勝つ」に書いてあることですが、向こう数年間に必要になるであろうお金は確保した上で、別の余裕資金を株式投資に回す。そして信用取引は一切しない。すなわち、空売りをしない。レバレッジをかけない。これら2つは、資金以上に賭けられる実質借金で、いずれも破産リスクがある。それをやらなくても市場平均に勝るパフォーマンスを十分あげられる、と「株で勝つ」にも書いてあります。正しいです。かぶ1000さんも滅多にレバレッジはかけませんし、かけてもとても穏当な余裕ある範囲。空売りはしていないはず。それで市場平均どころか資産を何百倍?とんでもなく築き上げられています。「株で勝つ」は出版されたのがあまりにも昔で、古い、日本とアメリカの違いもある、当時とはPERなど指標の捉え方も違う、など、信じ切れない向きには、併せてかぶ1000さんをフォローするという考えもあります。私はそうしています。彼は現役の個人投資家で、しかも日本株が専門ですから説得力しかない。かぶ1000さんなくして今回の私の成功もない。

もう少し詳しく知多鋼業を主力に据えた5年9ヶ月の事を書くと、売りたいタイミングが数回あり、最初の決算またぎの急騰時と、コロナショックで暴落した後の戻り相場で全く戻らない時、そして最近のエミン・ユルマズさんによる「知多鋼業はタダ同然」という紹介動画の出た直後の急伸時で、いずれも売らなくて正解だったわけですが、長期資金拘束される資産バリュー株においては「今の値上がりを逃すとまた下がったままに」や「上昇相場に乗り遅れてまでしがみついている暇は無い」といった焦燥が敵となります。決算またぎでいったん売るのは正解ではあっても、その後の低迷時にどこで買い直せるというのか。最初に買った理由を忘れて、上昇相場で上がらずじれったいからと損切りして、いつまた買い直せるのか。インフルエンサーの影響で一時的に上がったチャンスで「やれやれ売り」して、それもまだ全然安売りな訳ですが、果たして買った当初はそこで終わるつもりだったのか。これは、逆に売買の困難な低流動性の地方証券取引所の過疎株だからこそ、迂闊な売買を防げたという怪我の功名だったかも知れません。コロナショック下での別の銘柄での焦燥に駆られた迂闊な売買での大失敗も教訓になっていました。

これからも株価ではなく会社に投資する、買った理由が揺らがない限り売らない、指数や誰かとパフォーマンスを比べない、を貫いて投資していきます。リンチも「株で勝つ」には書いてありませんが、何かのインタビューで「株式投資に必要な個人投資家の資質は胆力だ」とも言っています。

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