
「入り口が混んでいる時に出口から入り、出口が混んでいる時に入り口から出ればいいのだ。」とは、伝説のファンド、フィデリティ・マゼランを運用し、長期にわたってS&P500指数をはるかに凌駕する資産の伸び率を記録したピーター・リンチの著書「株で勝つ」に書かれている名言です。日本にも同じような格言「人の行く裏に道あり花の山」があります。
私のたった7年の投資経験の中でも、この実例をいくつも実際に見てきました。「この銘柄がいい!」とXで持て囃され、新高値を更新し続ける銘柄は、大体その頃が株価のピークで、その後に深刻に落ち込むことが多かった。フォローしてもいないのに、検索をかけてもいないのに盛んにTLに上がってくる銘柄です。ぱっと浮かぶのは、コロナショック後の戻り相場での東洋合成工業や、日本M&Aセンターなどですね。
逆に、聞いてもいないのに盛んにネガティブ情報が流れてくる銘柄、例えばコロナ禍下でリモートワークに企業が流れて行っていた際の「賃貸オフィスはガラガラになる、都心などの不動産は暴落する、ホテルも死ぬ、家賃減免も直撃する」といった言説で下がりまくった三菱地所などは、その後は前述の東洋合成工業などと真逆の株価上昇を見せました。保有銘柄では東急不HDがそれにあたります。真逆と言っても、不動産銘柄は下落時に株価が半減したわけではないのに対し、M&Aセンターなどはその後に数分の1まで下がっていますので、大損も大損です。10分の1以下に下がった銘柄もあります。高値で買った場合の被害は資産消滅に近いものがある。その点、東急不HDを下落時にもそのまま持ち続けた場合は、元が割安ゆえ下げは限定的なうえ、その後に軽く2倍以上になっている。賃貸オフィスの空き室率は全く上がらず、賃料も上昇。地価も上昇、旅行も戻り、最高益を更新し続けています。
この手のネガティブな言説は、一見もっともらしい。過去にはJTや超低金利下の利ザヤをとれない地銀、業容が広く評価が難しいコングロマリットディスカウントで捨て置かれた5大商社、あるいは海運、鉄鋼、造船などは、一生上がらない、上がるとしたってたかが知れているし、続かない、と言われたものです。いうまでもなくこれらは後に相場の主役と言えるくらいの目覚ましい上昇を見た銘柄が数多い。JTはちょうど誰もかれもが下落に耐えられず売り払った底値近辺で買えています。買ったきっかけは煙草の値上げ認可です。現在株価は3倍です。ソフトバンクGも子会社アームの上場の話が出る前に評価が低くて大分割安だったところを買い、一時株価は4倍(現在は下がって2.6倍)に。
個別株投資をしていてわかったのは「情報というものは取りに行かないと出てこない」ことです。何気なく生きていて入ってくる情報というのはセンセーショナルな不安をあおる新聞やニュースの見出し、Xなどのもっともらしいポスト、うわさ話や、有識者ぶったインフルエンサーの薄い動画などになってしまう。そのほとんどに、価値はない。むしろマイナスだということがわかった。
リモートに移行でオフィスが不要になる、とか、大手商社は株価が見直されることはない、とか、ソフトバンクGの巨額の借金は資金繰りがだめな証拠だ、とか、たばこ業界は滅びる、とか。そういう悪評のたった銘柄は買いの要件を一つ満たす、とも「株で勝つ」にはあります。昔のアメリカでは廃棄物処理業者とか、葬儀屋、もちろん煙草会社も、世間の印象が悪く機関投資家も誰も買いたがらず、成長の割りに株価が割安で、そういう企業に投資して大もうけした、と書かれている。そういう企業は競合も入りづらい。衰退産業の中に投資妙味がある企業がある、とも。
かつての我が主力の知多鋼業も、代表的割安銘柄で、この銘柄が上がる頃には他の資産バリュー株など上がり切っているというような言われ方もしていました。この銘柄を主力にしていたおかげで、投資開始来の総資産の増加率でTOPIX指数に負けない程度の成績を残せています。
逆にサイボウズとMonotaROは、コロナショック後戻り相場の大分高いところで買ってしまいました。超優良企業で、長期保有にためらいはありませんが、さっぱり上がっていません。サイボウズは一時4分の1以下まで下がり、そこから一時4倍以上になっていますが、今また下がっている。
今、サイボウズは「Saasの死」というテーマで暴落しています。AIの台頭でサイボウズの主力のキントーンのようなノーコードでアプリを作るソフトは駆逐される、と。ほんとうにそうでしょうか。確かめる必要があります。今、まさに「総悲観」。誰もかれも売っている。だいぶ下がったと、買いも入っている。しかし、急落相場ではその買いがまた下落で振り落とされ売りを増やし、急落を加速する。どこまで下がるのか。そしてその底は絶好の買い場となるのか。
また、利上げによる金利上昇や相次ぐ各社株の配当利回り上昇で、ただでさえ低い利回りが余計に無意味なレベルになり何でもかんでも売られているグロース銘柄。これも、本当に下げるばかりでしょうか?グロースと言われるということは、言うまでもなく高成長、超優良企業である裏付けがあります。(東証グロース市場上場銘柄はそのかぎりではありませんが、プライム上場のサイボウズ、MonotaROなどはまぎれもなくそれにあたる。)どこまで下落し続けるのか、反転はないのか?すでに複数要因が重なっているサイボウズは叩き落されていて、割安水準とまで言えるレベルです。
総悲観は買い。何度もその事実を目の当たりにしてきました。保有銘柄でもそれで大きく上昇を取れてますし、逆に楽観は売り、という事例も体験しています。現在、主力の東海旅客鉄道は総悲観とまで言いませんが、リニア工事費膨張、工事遅延などで大分悲観されている株価です。業績はJR各社で一番と言っていいのに、一番割安。準主力のソフトバンクGもAIバブルが弾けるだのオープンAIは競合が出て厳しいだのデータセンター投資は回収できるのかだの日々ネガティブな言説が飛び交います。ヤマシタヘルスケアHDは業績の谷間、成長投資フェーズで、決算は買われるようなものではない。業績反転するという前提で買っていますが予断を許さない。
現在の株価にとらわれず、指数と比べず、業績を見て、情報は精査し、自分から取りに行く。これで何度か成功を体験しても、だれも見向きもしないような株を買い、保有し続け、その間に上昇相場について行かず成績が低迷することはどうしても慣れませんが、二度と方針を軽く変えず、腰を据えて投資していきます。


